以前に2016年末にオバマ大統領が署名した、“21st Century Cures Act”がアメリカの新薬承認をスピードアップ化させる、という記事を書きました。今後日本でも同様の動きがあるのか、脱毛症の患者にも影響があると思われるので、日本の現状を、日欧米の比較を通して検証してみましょう。

再生医療分野での新薬承認のスピードアップ化は既に始まっている

再生医療、細胞治療は、安倍首相の成長戦略で重点が置かれている分野です。特にiPS細胞を使った臨床試験は、世界で初めて実施されるなど、注目されています。

経済産業省の再生医療分野の報告書によると、再生医療、細胞治療の市場規模は、日本で2012年に260億円だったのが、2020年に1,900億円、2030年に1.6兆円、世界では、2012年に3,400億円が2020年に2.1兆円、2030年に17.2兆円と試算されており、今後が期待される市場です。

実は将来爆発的な市場拡大が予想され、期待のかかる再生医療分野に日本は既にそれに備え世界に先駆けて、2013年4月に「再生医療推進法」が可決されています。

さらにこの法律を後押しするための法案が、同年11月に「再生医療等安全性確保法(再生医療新法)」「改正薬事法(医薬品医療機器法)」として可決、と再生医療の分野では医療大国アメリカの先を行っているのです。

再生医療推進法
Source:http://www.nihs.go.jp/cbtp/sispsc/html/frame_j.html

「改正薬事法(薬機法)」で再生医療分野の新薬承認が最短2年に

2013年に4月に可決された「再生医療推進法」、同年11月に可決された「再生医療等安全性確保法」はその名の通りで、「改正薬事法」は、再生医療新薬と新機器を安全かつ迅速に提供することができるようにするための法律。

新薬や新機器に有効性が推定され安全性が認められれば、特別に早期に条件、期限付きで承認を与える、という画期的なものです。

以前に触れたアメリカの“21 st Century Cures Act”も新薬承認をスピードアップ化するものですが、これには再生医療分野は含まれておらず、日本の法律はアメリカの一歩先を行くことになります。

再生医療分野以外での日本の新薬承認の現状と問題点

厚生労働省の資料によると、再生医療分野以外の新薬承認は、アメリカに比べると、臨床試験で2年前後、臨床試験後の審査総期間で1年ほど長くかかっています。

その主な原因は、現行の規制により審査側、もしくは開発側に必要以上の負担が生じていることです。

審査側の一番の問題点は、承認審査人員が、欧米に比べて圧倒的に人数が不足していることで、平成18年時点の日本の審査人員は197人、アメリカは2,200人、フランスは900人、イギリスは693人、と日本が圧倒的に少なくなっています。

日本政府はその事実を把握していて、平成22年の時点では2倍の395人に増員されていますが、欧米と比べるとまだまだです。

一方、開発側の問題点は、規制により臨床試験期間が長くかかり、その結果、臨床開発費が高額になっていることです(アメリカの約2倍)。

欧米の承認薬がなかなか日本に入ってこない

さらに厚生労働省の報告書では、上記の問題だけでなく、よく一般消費者が抱く不満「欧米の承認薬が日本市場になかなか入ってこない。」現実も指摘しています。

同省によると「我が国で承認し、かつ海外でも承認されているものの36品目のうち、33品目(92%)については、海外で承認された時点で我が国では申請すらなされていない。」そうです。

申請の遅れについて同省が開発企業に調査したところ、一番の理由は「企業側の国内導入に関する意思決定等の遅れ(治験に入らない)」という驚きの回答がありました。つまり、臨床試験に入る前の段階で、既に開発が停滞しているのです。

その結果、「世界で初めて上市(上市:新しい製品に対する市場の動向をみるため、市場に新製品を投入する)された時点と、それぞれの国で上市された時点を比較し、その平均を見ると、我が国では1,416.9日、フランスでは915.1日、イギリスでは511.8日、アメリカでは504.9日」となっており、一般消費者の実感が数字にも表れています。

まとめ

日本の新薬承認は、欧米に比べると明らかに承認までの長さ、開発費の高さでおくれをとっていますが、再生医療分野では欧米の一歩先を行く画期的な法律が既に可決されています。

日本の国際競争力強化のためにも、その他の医療分野の新薬承認をスピードアップ化する法案が出るのは、時間の問題ではないでしょうか?

オバマ元大統領が最後に通した大きな法案が、日本の製薬業界を変えることになるかもしれません。