現在、日本国内で円形脱毛症で悩む患者の数は100万人以上。根治が難しい「現代病の一つ」と言われています。ところがアメリカのコロンビア大学が、ルキソリチニブ(商品名:ジャカビ)という骨髄線維症(血液がんの一種)の処方箋薬が、円形脱毛症の治療薬になり得ることを、2016年9月22日に生物医学専門誌(Journal of Clinical Investigation/Insight) で発表しました。

コロンビア大学ルキソリチニブ結果
Source:https://www.cuimc.columbia.edu

コロンビア大学メディカルセンターでの臨床試験では、中~重度の円形脱毛症患者12人にルキソリチニブを投与したことろ、75%にあたる9人に効果があり、毛髪の再生率は平均92%という臨床結果が出ました。

コロンビア大学のプレス発表
Drug Restores Hair Growth in Patients with Alopecia Areata

骨髄線維症の治療薬ルキソリチニブがなぜ円形脱毛症に効果が出たのか

骨髄線維症の治療薬であるルキソリチニブは、JAK阻害剤の一種です。JAKは酵素の種類の一つで、酵素は細胞分裂を行うための「きっかけ(触媒)」の役割を果たす体内の成分。

JAKという酵素は、血液のがんを誘発したり円形脱毛症を引き起こすだけでなく、関節リウマチの原因にもなっています。

関節リウマチと聞けば、少しは馴染みがあるかも知れませんね。簡単に解説すると、異物から体を守るため白血球が体内に入った異物を攻撃し撃退します。これが免疫反応です。

関節リウマチは自己免疫疾患で、本来の免疫反応とは逆に、自分を守るために存在している白血球が自分自身(関節)を異物とみなし関節を攻撃しはじめます。それによって痛みが出る、これが関節リウマチです。

円形脱毛症も自己免疫疾患の一種。つまり、白血球が髪の毛を異物とみなし攻撃してしまっているわけです。それにJAKという酵素が関与しているかもしれない、ということをコロンビア大学が突き止めました。

エール大学とスタンフォード大学の実験

関節リウマチの治療薬として知られるトファニシチブという成分があります。エール大学とスタンフォード大学の共同研究で、このトファニシチブを円形脱毛症の患者に投与したところ、やはり円形脱毛症が改善しました。

エール大学のプレス発表
In hairless man, arthritis drug spurs hair growth — lots of it

トファニシチブもJAK阻害剤の一種なので、JAKによって白血球が「誤作動」し、それによって円形脱毛症が起きていることはほぼ間違いないようです。

まとめ

今回のコロンビア大学での臨床試験結果は、2014年8月17日に発表されたマウスと円形脱毛症患者3人に対してJAK阻害剤を使い行われた臨床実験の結果を元に行われたもので、初回の臨床結果をさらに裏付けるものとして注目されています。

いち早い商品化をしてもらいたいところですが、課題は「ただJAKをやっつければいいのか?」という点だと思われます。酵素は体内に元からある成分でJAKは私もあなたも体内に持っています。

意味のないものが体内にあるはずがないので、ただ単純にJAKをやっつけてしまうと、副作用が起きる可能性も十分にあり、そのあたりの検証がまだまだ不十分なので商品化に至っていないのでしょう。

コロンビア大学の次の発表が待ち遠しいですね。