
自毛植毛とは、AGA(男性型脱毛症)の影響を受けず半永久的に生え変わり続ける後頭部の元気な髪の毛を、毛根の周辺(ドナー)ごと採取し、薄くなってしまった前頭部や頭頂部などに移植する外科手術のことを指します。
移植、つまり「移して植える」のが自毛植毛です。髪の毛が増えるわけではなく「髪の毛の引越し」になりますので、髪の毛の総本数は植毛前後で変化はありません(※)。
※採取時に一定数ドナーロスしますので総本数はほんの少しだけ減ります
健常な方の髪の毛の平均本数は日本人の場合で約10万本です。
AGAになると3万本以上髪の毛が抜けてしまう人もザラにいますので、AGAによって抜けてしまった髪の毛の本数を差し引いた「残り7万本の資産」をどう再配分して薄毛を隠していくのかが植毛の要(かなめ)になります。
このページでは、植毛初心者の方が悪徳クリニックなどの巧みな誘導に騙されることなくご自身で正しい植毛計画が立てられるよう、植毛のデメリットや失敗例も含めて自毛植毛の全容を理解してもらうために、医学的な臨床データや見地に基づき丁寧に解説していきます。
自毛植毛は、悪徳美容クリニックなどの巧みな広告宣伝や、お金儲けだけを考えたアフィリエイターたちのデタラメな記事の乱立によって正確や情報がほとんど出回っていません。
そのため、当ブログ内の植毛に関する詳細記事を読み進めていくと「えっ!?今まで聞いていたのと全然言っている事が違う。。」と困惑するような場面も出てくると思いますが、真実は2つも3つもあるわけがありません。
当ブログにおける「真実」の根拠は、世界最大の毛髪外科手術の非営利組織である国際毛髪外科学会の臨床データや、公益社団法人日本皮膚科学会が発行している男性型脱毛症および女性型脱毛症診療ガイドラインに基づくものです。
また、自毛植毛クリニックの著明な執刀医の先生方の実名も詳細記事内に記載していますので、当ブログで自毛植毛の概要を勉強した上で直接専門医に会い、ご自身の目と耳で事実確認することが失敗しないための最善の策だと思います。
自毛植毛の基礎知識
「基礎」「基本」「原則」。この3つの言葉が好きな人はなかなかいないと思いますが、「最低限これだけは知っておいてほしい」ことを簡単にまとめてみましたのでサラっと読み流した上で、興味があれば詳細解説記事へのリンクを貼っておきますので、リンク先(当ブログ内の記事)を読み進めてみてください。
自毛を使うのが「植毛」で人工毛を使うのが「増毛」
植毛手術では自毛のみを使います。人工毛や、たとえ人毛であっても他人の髪の毛は植毛には使えません。
なぜなら、我々人間の体は、異物が体内に入ってきたときに白血球が異物を排除しようとするからです。これを医学用語で免疫反応といいます。
人工毛や他人の髪の毛は「異物」にあたりますので、これらを頭皮に植えようとすると白血球が「外敵が来た!」と攻撃を開始(免疫反応)し、その結果として炎症(肌荒れ)が起き、次第に頭皮はブツブツだらけの悲惨な状態になっていきます。
【人工毛植毛で炎症が起きた頭皮】
「メスで皮膚ごと切るFUT」と「メスを使わず直接くり抜くFUE」の2種類ある
植毛手術には大きくわけてメスを使って頭皮ごと切り取るFUT(ドナーストリップ法)と、メスを使わず専用の医療器具や、あるいはロボットを使って後頭部などから髪の毛を「引き抜く」FUE(エフユーイー)の2種類の術式があります。
日本国内では、メスを使わないFUE法が主流になっていますが、FUEのデメリットを克服するために生まれたのがメスを使うFUT(ドナーストリップ法)ですので、国内の大手植毛クリニックが主に採用しているメスを使わないFUEは一世代前の植毛法となります。
従って、メリット・デメリットで比較した場合、当然のことながら最新の術式であるFUTに優位性があるのですが、古い術式を使い続けているFUE専門クリニックの営業努力により国内植毛シェアの9割をFUE専門クリニックが握るに至っています。
以下にそれぞれの植毛法のメリットデメリットを列挙しておきます。
メスを使わないFUE法
メスを使うFUT法(=ドナーストリップ法)
傷跡に関する誤情報に注意
なお、FUTとFUE共に後頭部に傷跡(FUTは線状の傷跡、FUEは丸く白い傷跡)が残りますので、いずれの術式でも(バレてしまうので)植毛後は後頭部の髪の毛は長め(できれば2cm以上)にしておいたほうが無難です。
FUE専門クリニックの広告や公式サイトを見ていると「FUTは線状の傷跡が残るがFUEは傷跡が目立ちにくい」と記載している場合がほとんどですが、これは言葉のトリックです。
正しくは「少量の植毛ならFUEのほうが傷跡が目立ちにくいが大量の植毛を行うとFUEのほうがむしろ傷跡が目立つ」です。詳しくは下記記事を参照ください。
メスを使わないFUE法と呼ばれる自毛植毛の術式のほうが、メスを使うFUT法より大きな傷跡が残ってしまうという真実についてデータを元に解説していきます。
植毛で「引っ越し」出来る髪の毛の本数は約12,000本まで
自毛植毛によって後頭部から採取できる髪の毛の本数は、日本人の場合12,000本くらいが限界値だとのコンセンサス(各学者の合意)が得られています。
元気な髪の毛を採取できる部位と本数は、後頭部から11,000本、側頭部から1,000本くらいが限界で、これ以上採取してしまうと後頭部や側頭部がスカスカになってしまいますので「取りすぎ」にはくれぐれもご注意ください。
また、大量の植毛を行いたい場合は、ドナーロス率の関係で植毛を3回以上に分ける必要があるのと、術式の順番にも守って欲しい原則があります。
植毛クリニックの公式サイトに「当院では一度の手術で大量の植毛が出来ます」と書いていることが多いですが、絶対にやってはダメです。移植する毛根の数が一定数を超えると飛躍的にドナーロス率(手術ミス率)が上がるので自殺行為です。
植毛にはメスを使うFUTと使わないFUEがあり、後者のFUEが圧倒的人気がありますが、FUEは大量の植毛には不向きで、かつ「最初の植毛」でFUEを選択すると大後悔することになります。具体的根拠(データなど)を元に解説していきます。
「どこに集中して植えるべきか」は超重要なテーマ
もう一つ重要なことが「どこに集中して植えるべきなのか」という点です。
できることなら偏(かたよ)ることなく全体的に植えていきたいのは山々だと思いますが、植毛に使用できる髪の毛の本数は決まっていますので、もし前も後ろも後退しているなら、前(M字部分)に集中して植えるべきかと思います。
なぜM字に集中すべきかは下記記事で医学的根拠を元に解説してあります。
AGAの影響を受けない元気な毛根を後頭部から採取して薄くなった部分に移植する自毛植毛は、後頭部から間引きできる髪の毛の本数に限界がある為、プロペシア等の飲み薬が効くきにくい前頭部(額の生え際)中心に植毛する事をお勧めします。
「抜く」のが医師で「植える」のは看護師の仕事
植毛手術では、後頭部などから髪の毛を採取するのは(法律上)医師免許を持ったドクターしか行えない作業ですが、前頭部や頭頂部などに「植えていく」のは、どこのクリニックでも看護師が行っています。
※「人体を切る」のは医師免許が必要ですが植えるだけなら看護師免許があればOKです
Source:https://drthair.com
「え?先生が全てやってくれないの?」と思いますよね?
でもよくよく考えていただきたいのですが、職人の腕前は資格や免許で決まりませんよね。特に自毛植毛手術というのは、医学の知識や判断がほぼ不要で、必要なのは手先の器用さです。
それともう一つ、集中力の問題があります。
植毛手術は単純作業の繰り返しになり、2千グラフト(髪の毛換算で約4千本)植毛するなら同じ作業を2千回繰り返すことになります。
これを医師だけで行うと集中力の限界からむしろミスが増えてしまいかねないので、集中力の限界を超えない範囲内で複数の看護師が入れ替わり立ち替わり植える作業を行ったほうが手術ミスは明らかに激減します。
一生懸命植毛の名医を探すのは決して間違った行動とは言えませんが、看護師の技術力も植毛の成功率に深くかかわってきますので、「腕の良い看護師がいるのはどこか?」という視点はとても大切です。
医師と看護師の評判が高いクリニックは以下の記事に特集してあります
自毛植毛クリニックのランキング記事です。「大手だから〇〇クリニックが1位」ではなく、医学的根拠や植毛費用から見たコストパフォーマンス、看護師の質、AGAの進行状態までをも総合的に熟慮した上で各医院を徹底比較しています。
坊主にしないと手術を受けられないのか?
大手が採用しているメスを使わないFUE植毛では、原則として坊主にしたほうが後頭部や側頭部の広範囲から均等に髪の毛を採取できますので術後の仕上がりが綺麗になります。
ですので、できれば手術するときは坊主にするか、後頭部を広範囲に刈り上げることを推奨しますが、よほどの覚悟がなければ坊主にしたり大きく刈り上げる勇気はないと思いますので、多くの場合が後頭部の中央付近をバリカンで刈り込みます。
ノーシェーブン(あるいはアンシェーブン)と呼ばれる「刈り上げないFUE法」も存在しますが、植毛費用が尋常ではないくらい高いのと、「なんちゃってノーシェーブン」と警告されているグレーな手法も横行していますので情報弱者が手を出すのは大変危険です。なお、メスを使うドナーストリップ法(FUT)は「刈り上げリスク」を考慮する必要は一切ありません。
ここに大きな落とし穴があります。
刈り上げの範囲を狭くすればするほど、狭い範囲内から髪の毛を採取することになりますので、丸く白い傷跡が目立ってしまうのと、狭い範囲内から髪の毛を多く採取すると、下記記事のとおり生涯で6,000グラフトまで可能な植毛が、2,000グラフトくらいしか採取できなくなってしまうのです。
植毛は、傷跡が分散して残るFUE法を大手が推進したがために、2回目の植毛を受けることができない「ババ患者(ババ抜き)」が続出しています。ブラックな植毛業界の裏側に迫る渾身のレポートです。
植毛手術後の経過について
植毛で恐らく一番あなたが気にしているのは「周囲に植毛したことがバレないこと」だと思います。
そこで、バレるリスクを考慮した上で「術後何日くらいで出社できるのか」と、植毛した後どれくらいの期間で生え揃うのかを下記記事で詳細解説してありますので参考にしてください。
自毛植毛で気になるのは「植毛した事が職場の同僚などにバレないか?」だと思います。まず絶対にバレないのはメスを使うFUT法で、メスを使わないFUE法は原則的に刈り上げが必要なので、部分ウィッグをレンタルする必要があります。
植毛クリニックで自毛植毛手術を受けてからフサフサになるまでの期間はかなりの個人差があり生えないケースも報告されています。ものすごく早い人で8か月くらいで通常は平均約1年ちょっと、遅い人だと生えるのに2年半ということもあります。
植毛の定説は間違いだらけ。正しい知識を頭に入れておこう
基礎的なことは以上になりますが、ここから先は、知らないと損したり失敗したりする上級知識について解説していきます。
「率」には注意が必要
植毛には「生着率」「ドナーロス率」という2つの率があります。
生着率とは、後頭部から採取した髪の毛が移植先のM字部分などで無事に生着する率のことを指しますが、よほどのことでもない限り、植えた髪の毛の95%前後は普通に生えてきます。
つまり生着率はどうでもいい指標ということですので、植毛クリニックの広告宣伝や公式サイトに「生着率95%以上を達成しています!」という文言は、何の意味もないし、むしろ患者を恣意的な誘導するグレーな文言とさえ言えますので注意してください。
大事なのはもう一つの率である「ドナーロス率」です。ドナーロス率は、毛根採取時の技術的ミスと術式(FUTかFUEか)によって大きく数値が動きますので、植毛を検討するにあたり背景を含めてしっかり勉強して欲しい重要な指標です。
ドナーロス率とは、採取した髪の毛の本数を分母にして移植先で無事生着した本数を分子として計算します。1,000本採取して800本生着すればドナーロス率は20%という計算になります。
まず、大前提として、旧式の植毛法であるFUEはFUTに比べてドナーロス率が高いです。どんな名医でもFUEでドナーロス率が10%を切ることはありえませんし、平均的な植毛医ならFUEでは30%はドナーロスを起こします。
この、FUEによるドナーロス率の高さを改善するために生まれたのがFUT(ドナーストリップ法)ですので、植毛の正しい常識として頭に叩き込んでおいてください。ここ、本当に重要なポイントですので。
※具体的には下記記事を参照ください
植毛クリニックの公式HPや広告を見ていると「生着率(あるいは定着率)は95%以上です」と書いてあったりしますが、そもそも生着率は測定できませんのでウソの数値です。ご注意してください。ただしあり得なくはない数値とも言えますが。
細さ自慢にも注意が必要⇒むしろドナーロス率が上がります
もう一つ重要なことが。
FUE専門クリニックでの広告宣伝時のグレーな常套手段に「細さ自慢」があります。
メスを使わないFUE植毛ではチューブパンチ(あるいはマイクロパンチ)と呼ばれるFUE専用の医療器具を使用しますが、チューブパンチは太いと傷跡が大きくなりますので論外ですが、細いと今度はドナーロス率が上がってしまいます。
つまり、太すぎても細すぎても問題があるということです。
【チューブパンチ】
髪の毛が細い白人の場合で0.9mmが適正サイズとされていて、それ以上細いと採取時に毛根を切断してしまうのですが、白人よりも髪の毛が太い日本人に対して、日本国内のFUE専用クリニックでは「うちは0.8mmのパンチを使用していますので傷跡が目立ちません」と宣伝しています。
これ、自殺行為です。絶対にやってはダメです。最低でも0.9mm、できれば0.95mmくらいの直径のチューブパンチでないとどんな達人でも採取時に毛根を切断しまくってしまいます。
「吸引」という高度なFUEテクニックもあるのですが、吸引テクニックを使っても0.8mmのパンチでは採取時のドナーロス率が飛んでもなく上がってしまいますので絶対に騙されないでください。
「傷跡が小さくて済むので出来るだけ細い医療器具を使って毛髪を採取すべし」という大手植毛クリニックの説明は、患者を勧誘するための宣伝文句なので騙されないようにしてください。日本人の場合0.9mm以上の太さが無いとドナーロスしてしまい大後悔します。
植毛に失敗するケースや自毛植毛のデメリットを先に知っておこう
自毛植毛は、薄毛対策に大変有効な手段の一つであることは間違いありませんが、デメリットもあれば失敗するケースもあります。
そこで、具体的にどんなデメリットや失敗があるのか下記記事で具体的に解説していますので一度目を通しておいてください。
植毛は「自毛なのでバレない」「一度植えれば半永久的に脱毛しない」「調べれば安くて腕の良いクリニックがちゃんとある」のが大きなメリットですが、デメリットとして大手で植毛するなら刈り上げは必須であることと生え揃うまで意外にに時間がかかることがあげられます。
自毛植毛のドナーストリップ法(通称FUT)はメスを使って後頭部の頭皮を薄く切開して毛根を余す事なく移植に使い切るおすすめの術式ですが、麻酔が切れた後数日間は鈍痛が続きます。とは言え大した痛みでもないです。
自毛植毛は正しく植毛すれば成功率は9割を超えますが、宣伝広告やアフィリエイトサイトに騙されて間違った術式を選び間違った順番で植毛を行うと逆に高確率で失敗に終わりますので、この記事でしっかりと「植毛の真実」を勉強してください。
高密度にしたい場合に絶対に知っておいて欲しいこと
「特にM字は出来るだけ密度を濃くしたい」と考えるのは極々自然なことだと思いますので、高密度にするために注意しておいて欲しいポイントを下記にまとめてみました。
簡単に下記記事を要約すると、1回の植毛手術で高密度に挑戦してしまうと、生着率が一気に落ちてしまい大後悔することになりかねませんので、2回に分けて下さいというようなことが書いてあります。
高密度植毛は、まだ生きて再生する可能性がある既存毛を死なせてしまう上に新規に植えた髪の毛同士が栄養を奪いあって片方がドナーロスする確率も上がります。どうしても高密度にしたいなら植毛手術は2回に分けて行うようにしてください。
コスパは最重要指標。クリニックはこうやって選ぼう
自毛植毛はそれなりに出費を覚悟しないといけない薄毛対策ですので、各クリニックのコストパフォーマンスを比較するのはとても重要です。
また、植毛する量によってはウィッグのほうが安上がりになるケースもありますので、植毛クリニック同士の横の比較だけでなく、AGA専門クリニックに通って飲み薬による治療を行った場合等も含めて下記記事で植毛費用の概算について解説してあります。
平均的な価格の自毛植毛クリニックでは基本料金20万円+(移植グラフト数×1,000円)が植毛費用になります。大手だとグラフトあたりの単価が1,200円くらいに上がります。AGA薬治療よりは高くウィッグよりは少し安いといったところです。しかし、
また、コスパ以外にも重要な視点はたくさんありますので、下記記事も併せて参考にしてください。
自毛植毛クリニックのランキング記事です。「大手だから〇〇クリニックが1位」ではなく、医学的根拠や植毛費用から見たコストパフォーマンス、看護師の質、AGAの進行状態までをも総合的に熟慮した上で各医院を徹底比較しています。
自毛植毛クリニックを丸裸にしてみる
植毛シェア首位のアイランドタワークリニックを筆頭に、各植毛クリニックを徹底調査しメリットデメリットを解説しています。
アイランドタワークリニックはFUE専門院なので2,000株までの少・中量植毛には向いていますが大量植毛には不向きです。メリット・デメリットがはっきりしていますので、後頭部の傷跡クレームが多い理由も含めて徹底解説していますので「裏側」までしっかり勉強しておきましょう。
アスク井上・親和・ロボット植毛。この3つに共通しているのは、目視できない頭皮下を経験とカンを頼りに切開していくFUEという植毛法です。医師やロボットの技術うんぬん以前に構造的な問題を抱えてしまっているのでおすすめはできません。
以上