現在、AGAをはじめとするさまざまな脱毛症の治療法は、植毛、薬(経口薬、塗り薬)、幹細胞技術、クローン技術などいろいろなアプローチから試みられています。

当サイトの『【朗報】AGA治療薬が続々と商品化!』シリーズでは欧米の薄毛治療法の最新情報を、臨床試験の結果や会社のプレスリリースなどを中心に、お伝えしていきます。

Histogen社のHSC(Hair Stimulating Complex)

まずは、Histogen Inc. というカリフォルニア州サンディエゴに本社を置く2007年に設立された再生医療会社です。

Histogen社のCEO(最高経営責任者)、Gail Nahghton博士はニューヨーク大学医学部を卒業し、その後カリフォルニア州立大学ロサンゼルス校(UCLA)でMBAを取得しました。

アメリカの医療関係の会社のCEOはその多くが、医療関係の学位を持っていながらMBAも持っていて、会社の経営にも手腕を発揮する例が見られます。

Gail Nahghton博士は1980年ごろ、細胞は平らな表面(ペトリ皿)の上で培養する事が当たり前だった当時、3Dの手法を用いて細胞をより体内の環境に近い状態で培養する技術を確立。

この技術は当初、他の研究者から懐疑の念を持たれていましたが、博士が以前より複雑で自然に近い細胞の培養に成功した後は、周りからの協力や資金援助をより簡単に得ることができるようになりました。

この経験から、その後いくつかの会社の設立に関わるきっかけになり、やけど痕の回復、骨や軟骨の再生、神経の再生、肝臓やその他の臓器の再生、アンチエイジング化粧品、などさまざまな分野で、100件近くもの特許を取得しています。

誰もが認めるような研究の成果が出れば、その後の研究は投資家からお金を集めることが容易になる、というビジネスモデルをNahghton博士は証明しました。

医師の学位だけを持っていたら、資金が理由でここまで手広く研究を成しえなかった可能性があります。

Histogen 社は髪の毛の分野にも進出し、HSC(Hair Stimulating Complex)という特別に開発した抽液を患部に注射することで、毛髪再生を試みています。

HSCは新生児の表皮細胞を低酸素下(3~5%の酸素濃度)で培養することで得られます。この条件下では、細胞が多様性を持つようになり、毛髪の生存能力に重要である成長因子の増加が見られるそうです。

HSCにはKGF、VEGF、フォリスタチン(follistatin)、というたんぱく質が含まれており、これらのたんぱく質特にフォリスタチンは、毛髪形成に関与し、眠っている毛包に刺激を与えることが分かっています。

Histogen 社はHSCに関して二回臨床試験を行い、どちらの実験でも増毛効果が認められました(一回だけの治療で、1年後に73.61%の増毛)。この臨床試験が注目されたのは、脱毛症がかなり進んでいる患者にも有効であり、男性だけでなく女性にも効果があるという結果が出たからです。

Histogen社HSC効果
Source:http://hairwajidi.co

臨床試験は2008年から行われ、現在、FDA承認に向けて最終段階に入っています。メキシコと日本でもいくつかのクリニックがこの臨床試験に参加しており、Histogen社はアメリカかメキシコ、もしくは日本で近年中に製品販売を目指しているそうです。

特に日本は2013年の「再生医療新法」の成立により、再生医療関係の薬や技術が承認されやすくなっているので、市場として最重要視され、もしかすると一番最初に商品が紹介される可能性もあり、注目されています。

アメリカではHitogen社は毛髪再生研究で日本の資生堂のライバルといわれ、どちらが早くに成果を出すのか、投資家にとっては目を離せない会社の一つです。

気になるのはやはり資金面。Hitogen社は2015年に1800万ドル(20億6,896万円)を調達し、会社設立以来合計3,300万ドル(37億円9,310万円)にものぼる研究費を得ています。今後も海外の再生医療会社との提携し、さらなる資金調達を計画しているようで、少なくともお金の面で研究が遅れるということはなさそうです。

Fidia 社のBrotzu Lotion

Fidia Permaceutici S.p.A..はイタリアAbanoで1946年に設立されました。

Fidia社では血管外科医であるGiovanni Brotzu博士が研究開発したAGAのための塗り薬、Brotzu Lotionの臨床試験を進めています。

どうして血管外科医が薄毛の治療薬を開発するようになったのでしょうか?

Brotzu博士は、糖尿病症患者の血管機能不全の治療のため試験薬を足に使っていたところ(糖尿病になると足の血液の循環が悪くなることが)、ある日患者の足の毛が増えているのに気付きました。

この糖尿病患者向けの血液機能不全の治療薬を円形脱毛症に応用したものが、Brotzu Lotion。子供の円形脱毛症患者に施した臨床試験の写真が衝撃的なものでした。

Brontzu Lotion
Source:https://perfecthairhealth.com

Brotzu Lotionの主な成分はDGLAといわれる脂肪酸の一種で、抗炎症作用があることが知られています。

その他の成分は、カルニチン(脂質代謝に関与するビタミン様物質)、S-エクオール(大豆由来の成分で近年更年期障害の症状緩和のためにサプリメントとして使われている。)、などです。

その後Fidia社が博士から知的所有権を全て買い取り、AGA治療のために臨床試験が行われてきました。通常の薬と比べると臨床試験が比較的早く進んでいますが、それはDGLA(脂肪酸の一種)が薬として扱われないので、いくつかの段階を省くことができるからです。

近年中にイタリアで製品化される予定、といわれています。Fidia社はアメリカに完全子会社があることから、より市場の大きいアメリカでの販売が先になるという噂も。

Follica社のRAIN

Follica Inc.はマサチューセッツ州ボストンで2005 年に設立されたバイオテクノロジー企業です。

同社はPureTech Health社という同じくボストンに本社を置き、2015年にロンドン株式市場に上場を果たした会社の子会社で、親会社はさまざまな医療関連企業に投資を行っています。

Follica社にはRichard Anderson博士というハーバード大学医学部卒の皮膚科医、George Costarelis博士というペンシルベニア大学医学部卒の皮膚科医。さらには親会社PureTech Health社のCEO、Daphne Zohar(ノースイースタン大学でMBA取得)、David Steinberg(シカゴ大学でMBA取得)という計4人の共同創業者がいます。

Follica社は2011年のプレスリリースを最後に研究開発に関する発表がなく、謎に包まれていました。毛髪再生業界では、投資会社が親会社である事から資金面での問題はないことは知られていましたが、あまりの沈黙の長さに研究開発が行き詰ったと思われていました。

ところが突然2016年に、今までにない全く新しい形の毛髪再生の治療法を公表。

同社のウェブサイトを見てみると、AGA患者を対象とした、医療器具、塗り薬、スマートフォンのアプリを連動させた毛髪再生医療技術です。

まず資格をもった医者の下で特別に開発された医療器具(下の画像)で治療を受け、

Follica社RAIN(クリニック)

家庭で別の器具(下の画像)を使って塗り薬と併用しながら治療を継続し、

Follica社RAIN(家庭)

毛髪の育成状況を毎日医者にアプリで報告しアドバイスを得る、という形のようです。

Follica社RAIN(アプリ)

医者のもとで使用される器具で皮膚組織を意図的に壊し、その皮膚が治癒する際に毛髪を再生させる技術とされていて、家庭で使う塗り薬に幹細胞技術が関係しているようです。

Follica治療法(イラスト)
Source:http://www.follicabio.com

臨床試験では、既存の髪の毛の再生だけでなく、あらたな髪の毛の再生も認められています。

親会社のPureTech Health 社のウェブサイトによると、臨床試験が最終の第三段階に入っていて、2017年にFDAの認証(医療機器は、承認approvalではなく、認証clearanceをもらえば市場に出せる。)を得て、その後数年以内に商品化を計画中のようです。

まとめ

お伝えした3社の研究はそれぞれ違ったアプローチからの治療法ですが、どれも商品化一歩手前だといわれています。

ただし薄毛の治療法の研究は、資金面、安全面、臨床試験を繰り返しても成功率が変わらない(時には対象人数を広げたことで成功率が低下することも、など数々のハードルが出てくることがあり、突然の中止に追い込まれることも少なくありません。

それでも究極の永遠の治療法が自己植毛しかない現在、どんなニュースでも患者の心を躍らせてくれます。続報が待ちきれませんね。